日本癌学会学術集会@福岡 参加レポート

会議場写真 Bioinformatics

2024年9月19日から21日にかけて、福岡で開催された第83回日本癌学会学術集会に参加してきました。AI、ゲノム解析、シングルセル解析など、がん研究の最新動向に触れることができ、大変有意義な3日間でした。

AI時代のがん研究

AIは画像診断分野での活用が進んでおり、内視鏡検査でのリアルタイム腫瘍検出や手術ナビゲーションシステムなど、臨床現場への応用が進んでいます。京都大学の小濱和貴先生は、この分野の第一人者として臨床現場での活用事例をご紹介されていて、とても印象的でした。

国立がん研究センターの白石友一先生は、スプライスに影響する変異(SAVs)について発表されました。ExomeとRNA-seqデータを用いてSAVsを発見できたとの発表で、さらにRNA-seqだけでSAVsを見つける研究テーマについて発表されていました。

分子生物学的なオミクス研究分野の発表では、特にシングルセル遺伝子発現解析と空間的遺伝子発現解析の発表が目立ちました。
特にがん研究の世界では日々新たな技術が生まれていて、その中でもシングルセル解析と空間的遺伝子発現解析は、がんの理解を深める上で非常に重要な役割を果たしています。これらの技術は、がん組織を構成する細胞一つ一つを詳しく調べることで、がんの複雑なメカニズムを解き明かす可能性を秘めています。がん細胞だけでなく周辺も含めたがんの微小環境も明らかにすることができるので、基礎研究だけでなく抗がん剤の開発などの社会実装にも活用され始めていてワクワクします。

空間的遺伝子発現解析の社会実装という面では、国がん東病院の今井先生が発表されていたMONSTAR-SCREEN-3プロジェクトが印象的です。3200人分の病理切片から空間的遺伝子発現解析を行い、病態を解明しようという意欲的なプロジェクトで、膨大な分子生物学的な情報と臨床情報から創薬研究へ活用できることが期待できます。MONSTERを含むSCRUM-Japanプロジェクトは複数の製薬企業が参画している国家プロジェクトなので、実際に新薬が開発されることがとても楽しみです。

バイオインフォマティクス・計算生物学の新展開

バイオインフォマティクスのセッションでは、理研の高橋慧先生がLLMを用いてCGP検査のエキスパートパネルでの検討を省力化する発表をされていたのが印象的でした。また、国がんの加藤護先生は、J-PDXでVirtual tumor, Virtual drugでがん細胞をシミュレーションするモデルを作成しているとのことでした。まだ全エクソームの変異データだけとのことですが、今後は遺伝子発現やエピゲノム情報も統合していく方向とのことで、まだ未来の技術とはおもいますが非常に期待しています。

まとめ

今回の学会参加を通じて、がん研究におけるAI、ゲノム解析、シングルセル解析の重要性を改めて認識しました。特に、空間遺伝子発現解析は今後の発展が期待される分野であり、我々も積極的に取り組んでいくべきだと感じました。

また、企業ブースでの情報交換も大変有意義でした。業界企業との連携強化や案件紹介など、今後のビジネス展開にもつながる可能性を感じています。

今回の学会参加で得られた情報を元に、今後の研究開発をさらに加速させていきたいと思います。

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